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がん患者さんの精神症状
- がん患者さんの約半数に何らかの精神症状(適応障害、うつ病、せん妄)が認められる
- 適応障害、うつ病の最大の原因の一つは痛みである(痛みの治療=心のケア)
- 特に終末期の身体状態が悪化する時期では、せん妄の頻度が増加する
- せん妄は様々な身体的問題による意識障害であり、精神的ストレスによるものではない
■適応障害
- 頻度:10〜30%
- 心理社会的ストレス(がんの再発や進行、PS悪化など)に関連して起こる不安・抑うつ。(うつ病の診断基準は満たさない)。
- それにより日常生活に何らかの支障(仕事や家事が手につかない、眠れないなど)を生じているもの。
- がん以外でも人生の中で経験することがある(受験や就職の失敗、妊娠・出産、失恋、離婚など)
■うつ病
- 頻度:3〜10%
- 抑うつ気分(気分が落ち込む)
- 意欲・興味低下(物事に興味がなく)
- 自責感(自分は価値がない家族の重荷だ)
- 焦燥感・制止(いらいらする動作が鈍くなる
- 希死念慮(死んだ方がましだ)
- 睡眠障害、食欲低下、思考・集中力低下、倦怠感
■適応障害とうつ病に共通なこと
- 自殺の最大の原因
- QOLの全般的低下
- 家族の精神的負担増大
- 治療コンプライアンスの低下(必要ながんの治療の拒否など)
■がん患者の不安・抑うつの危険因子
一般的要因 |
若年、一人暮らし |
がん |
痛み、低い身体活動度
進行がん・再発がん |
薬物 |
ステロイド剤 |
心理社会的要因 |
神経質、悲観的
うつ病の既往歴
不十分なソーシャルサポート |
忘れてはいけない!痛みは最大の原因
■せん妄
- 頻度:全身状態がよいとき数%、末期30〜80%
- 注意の集中・維持・転導能力の低下を伴う意識障害で、短期間に出現(数時間-数日)し、症状が一日のうちで変動
- 認知の変化(記憶欠損、失見当識、言語の障害など)、または痴呆によらない知覚障害
- 見当識障害(場所や時間がわからない)
- 幻覚(誰かがそこにいる;幻視など)
- 妄想(殺される;被害妄想)
- 焦燥(いらいら)
- 興奮(ベッドから立ち上がる、点滴を抜く)
- 睡眠覚醒リズムの障害(昼うとうと、夜間は不眠)
- せん妄による影響
- 事故、自殺の原因
- 家族とのコミュニケーションの障害
- 自律的な意思決定の障害
- 入院期間の長期化
- 医療スタッフの疲弊
■がん患者のせん妄の原因
原因 |
Definite |
Probable |
Possible |
Contributory |
割合(%) |
薬剤 |
4
|
14
|
11
|
35
|
64 |
感染
|
1 |
26 |
12 |
7 |
46 |
臓器不全 |
2 |
43 |
3 |
6 |
54 |
脳病変 |
15 |
15 |
3 |
3 |
36 |
低酸素 |
8 |
24 |
4 |
7 |
43 |
電解質異常 |
1 |
25 |
16 |
4 |
46 |
環境 |
0 |
2 |
1 |
17 |
20 |
放射線の脳照射 |
0 |
0 |
0 |
11 |
11 |
化学療法 |
0 |
0 |
0 |
11 |
11 |
手術 |
0 |
0 |
0 |
32 |
32 |
Tuma et al., Arch Neurol, 2000
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■サイコオンコロジーのコンテンツについて
- サイコオンコロジーは精神腫瘍学と訳され、がん患者さんの心のケアの重要なメニューです。
- サイコオンコロジーのコンテンツは明智龍男先生(名古屋市立大学大学院 精神・認知・行動医学、名古屋市立大学病院 こころの医療センター)のご監修のもとに鹿児島緩和ケア・ネットワークが作成しております。コンテンツに対するお問い合わせは直接、鹿児島緩和ケア・ネットワーク事務局にお問い合わせ下さい。
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